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龍人はそう妥協し、やっと自分の作業に取りかかろうとした。
それにしても、遅いな平良。
美術室から昇降口が見えるが、掃除していた奴等はもうとっくに出ていってしまった。
いつもの平良なら清掃が終わり次第、速攻で飛んでくる筈なのに。
「遅いな」
龍人が窓の外を見ながら思わず口走った時、
机の上に放置していた携帯電話が振動しだした。
龍人は1コール毎に前進するそれに気付き、急いで手に取る。
着信──濱崎平良
メールすればいいのに、平良はどうやら電話が好きなようだ。
「もしもし。何?」
奥からは微かに波の音と風の音。
「あ、龍? 悪いんだけど、今日部活いけない」
「マジで!?」
「マジで」
平良は悪いと微塵も思っていないような口調で明るく言い放った。
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