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海岸沿いの道。
愛理は、自転車で帰宅していた。
まだ残っている夕日の痕跡は海の向こうの空に少しだけ色を足し、地に落ちた落ちた血痕のように不気味な表情を残している。
きっと、あと数分もしないうちに、この場所は目先も見えぬ程、暗くなるだろう。
ふと彼女は砂浜に目を移す。
何かの気配を感じたからとか、そういうわけではない。
ただ無意識に目を向けた。
目に入ったのは、黒い海。
そして、何故だろう。黒い人影…
愛理は自転車の速度を落とした。
真っ暗なのに、明かりも点けずに何してるんだろう。
こんな夜に…もしかして自殺?
自分の想像が加速し悪寒が走る。それと共に自転車を止めた。
僅かに残る光を頼りに仰視する。
そして、彼女はその影を知っていることが分かり、安心と疑問が沸き上がった。
この時間なら彼の場合、まだ部活をやっている筈だ。
それとも今日は気が変わったのだろうか。
愛理は、少し躊躇いながら口を開く。
「…平良?」
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