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「!!」
手が肩に触れようとした瞬間、愛理は声にならない悲鳴を上げ、手を引っ込めた。
目に入ってきたのだ。
ありえもしない何かが……
それは、サッカーボール位の大きさで、ボールにしては形が歪んでいた。
愛理の脳内では、もうそれが何なのか推測できていたのだが。
突如、背後で上げられた悲鳴に気付いたのか、平良も驚いて顔を上げる。
唱えていた呪文の様な呟きは消えた。
「え!? あああ、愛理…?」
「……平良…ど、どうしたの?こんな…ところで」
愛理は平静を装ってみる。
平良の手の中にある筈の“有り得ないもの”に目をやることができない。
生理的に拒否する不可解な感情。
「う…ん…ちょっとね。絵の資料集めに夢中になってて」
同じく平良も動揺を隠そうとしている様だ。
彼は小さくふらつきながら、立ち上がる。
愛理はその姿を見て首を傾げた。
──おっかしいなあ
今度は首を逆方向に傾ける。
何故だろう。
先程愛理が見たものが幻覚でなければ、平良は両手を下ろすこと等できない筈だ。
何か抱えているのだとしたらだが。
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