絵描き仲間の日常

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苦しそうに水をかき、何とかして浮かぼうともがき続ける少年。 これから先に起こる死という恐怖を拒絶したいとでもいうように手を空に伸ばしている。 その少年が何なのか聞いてみたが、平良は答えてくれなかった。 ただ「秘密だよ」と絵に似合わぬ無邪気な表情で微笑んでみせた。 「あ、龍人! 早いね」 「また掃除サボったのぉ?」 今までついてなかった電灯が小さく点滅し、部屋に明かりを灌ぐ。 「ああ、未夢、茜」 扉の近くに立っていたのは、安斎未夢(あんざいみゆ)と三原茜(みはらあかね)。 二人とも美術部員で龍人と同じ二年生だ。 二人は仲良く、いつも廊下を一緒に歩いてるのを見る。 ショートカットの黒髪で真面目そうに見える未夢と、髪を茶に染め、派手な着こなしをした茜のコンビは遠目に見ても誰だか認識できるだろう。 「あれ? 愛理は?」 「愛理ぃ? 今日歯医者だって。先帰ったよぉ」 龍人が質問すると、茜はセミロングの茶髪を弄りながら答えた。 美術部二年生は合わせて五人である。 龍人に平良。茜、未夢。 そして話に出た、飯田愛理(いいだあいり)だ。 あとは、一年生。今日は集会があって遅れると先程、龍人の携帯にメールで報告があった。
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