勿忘人と叶わぬ告白

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 真剣な顔をしてそのグループを進めてくる悠を思い出しながら、その曲を聴いていると、音楽が止んだ。     「もしもし」 「あ、悠? ちいだけど」 「あれ? ちいちゃん……。どうしたの?」    今さっき起きたかのような腑抜けた声だ。電話するまで寝ていたに違いない。     「今日ってどこか行くんじゃなかったっけ」 「んー。そうだっけ……。ってああああああ!」      携帯電話からハウリングが聞こえてくるほどに悠が叫んだ。  しばらくして、少し携帯電話から離れて、悠の声が聞こえてくる。     「ごめん! 本当にゴメンね! 今何時だろ……。じゅ、十二時!」 「うん。十二時」 「うわぁぁ、もう本当にごめん! 今すぐそっちに行くから!」 「うん。落ち着いてでいいからね? 事故らないようにゆっくり来て」 「ごめん……」      携帯電話を切り、悠を待つ。こんなことが何度あったことだろう。僕が悠の遅刻を待つことは、悠と遊ぶことの一環になってしまっている。それを嫌と思えない自分は変態マゾヒストなのか、それとも面倒見がいいのか。どちらにせよ、悠のことが好きなんだからそれはそれでいいのかも知れない。      しばらくして、肩で息をしながら、悠が遠くから走ってきた。  元々物事を忘れやすく、どこか抜けたところのある悠は、よく約束した事を忘れる。本人は「AB型だから……」と言ってはぶらかせているが、全国のAB型の人に謝れと言いたい。    今日はテストでいい点数を取ったために、そのお祝いと言うことだった。普通の人から見れば悪い点数だとしても、赤点の常連、悠からすればそれは良い点数。良い点数を取れて、上機嫌で誘ってきたと言う訳だ。     「ご、ごめんね。遅くなって」 「大丈夫だよ。僕も少し遅れてきたから」      僕は小さい子供にそうするように悠の頭を優しくなでた。悠は目を細めて嬉しそうな表情になる。
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