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赤や黄などに色付いた森を右手に、茶色い落ち葉を踏みしめる。地面に落ちてひからびた葉は踏まれると、乾いた音を立てて崩れる。
俺は童心に帰ったかのように、その乾いた音を楽しみ、いつも鎖で繋がれて同じ景色しか見ていない愛犬と共に歩く。木々は赤や黄など、華々しい衣裳に衣替えしていて、彩り鮮やかな森に秋の終わりを感じ、そして、落ちた木の葉が冬の訪れを予感させた。久しぶりの散歩だからか、愛犬は嬉しそうな顔をしながら、俺を見上げて横に並んでいた。人懐こい顔を浮かべたそいつに釣られて俺の顔もついつい綻ぶ。
そんなんで、一人と一匹で和やかに微笑みながら歩いていると、突然愛犬が勢い良く走りだした。俺はすぐに体をのけ反らせた。
長年散歩をし続けて体に染み付いた癖のようなもので、仰け反ると重心が後ろの方にいくので、こうしていれば犬に引きずられるようなことはまずなくなる。
のけ反って視界が少しだけ上の方に傾いた。視界の左側が全体的に茶色い田んぼや、その中にポツポツと点在する敷地の広い一軒家などの景色から、真っ青な空と、そこに浮かぶ白い雲、それと色とりどりの森とに変わる。その景色の移り変りが、まるで散歩に行くのを面倒がる散歩前の気分から、散歩中の晴れやかな気分へ移り変わるのが投影されているようで、少し苦い笑いが零れ出た。
愛犬が減速して再び俺の視界は茶色っぽくなる。ほとんどの農家が稲刈りを終えたのか、青々と天に伸びる稲の姿は消え去り、脱穀をすませた農家の田んぼにはクリーム色のもみがらがばらまかれていた。
俺はそれらと綺麗な青空を見ながら、また頑張ろうかなと何となしに思った。
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