飴玉

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 ベンチに座って指先で飴玉を転がす。袋から取り出したのは公園に着いてからだったのだけれど、飴玉はベタベタと指にへばりつくほどに溶けていた。    ――バーカ。    頭でそんな言葉を並べると飴玉をくれたあいつが頭に浮かんだ。あの時は擦れていた喉も、今はもう擦れていない。  もらってすぐに一度放り投げて、でも何となく拾って、食べずにとっておいたそれ。もしかしたらあいつとの繋がりを形にして持っていたかったのかもしれない。  目を瞑ると微かに線香の匂いがした。墓参りをしてから、ずいぶん長い間そこにいたから匂いが染み付いてしまったのかもしれない。線香の匂いは嫌いだけれど、あいつが憑いてくれたのかもしれないと思うとあまり嫌とは思わなかった。    ――おいおい、喉は大事にしろよ。少ない長所の一つだろうが。    あいつの顔が浮かんで、最後に言われた言葉を思い出す。まったく、デリカシーの無い奴だと思う。それは泣いている女にかける言葉としては不適切だろうに。泣かせたのがあいつ自身なのだから余計にそう思う。  私は何であいつに惹かれたのだろう。あいつのどこに惹かれたのだろう。  鼻の奥がツンとして、鼻頭が少し痛みを訴えた。ついさっきも浮かんだ、私をバカにするあいつの言葉がまた頭に浮かんでくる。  無性に飴玉を放り投げたくなった。ベンチから立ち上がって思い切り飴玉を放り投げようと振りかぶる。  放り投げて、満足してベンチに腰掛けてなんとなく自分の膝辺りに目を落とす。さっき投げたはずの飴玉が薬指の付け根辺りに付いていた。  また投げるために立ち上がるのもなんだか億劫で、座ったまま手を上下に振る。飴玉はしつこいくらいに指からなかなか離れないと思ったら、突然あっさりと指から離れた。  なんだか飴玉と自分が重なって少し笑えた。  落ちた飴玉は地面に落ちて、簡単に割れた。  割れた飴玉があいつに重なって、なんだか胸が苦しくなった。
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