お兄ちゃん。

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「次はカラオケなんてどう?」 帰り道の車の中、彼がそんな事を言った。 次があるんだ? 少なくともがっかりはされてないと思って安心した、 それから彼はチビの通う保育園の近くまで送ってくれた。 交差点の信号待ちの間にあたしは車を降りた。 「今日はありがと!」 「うん、またな」 短い会話で別れを惜しむ余裕すらなかった。 そしてあたしは急いでチビを迎えに行った。 何だか夢から覚めたみたいに、一気に現実に引き戻された感じがした。 数時間後、台所で夕飯の支度をしながらメールをうつ。 【今日はありがとね!楽しかった(^_^)】 すぐに返事はきた。 彼のアドレス入りで。 【こちらこそ。久々に楽しかった(^_^)何だかドキドキしちゃったし。それからさ、直メしない?こっちの方が便利だろ?】 あたしは迷う事なく彼のアドレス宛てにメールを送った。 彼のアドレスからは、家族を大切に思っている事が良く解った。 その日、あたしは彼から二度目の告白をされた。 【やっぱり会っちゃうとやばい。俺は恵莉が好きだ】 この時のあたしはまだそこまで彼に惹かれていた訳ではなかったと思う。 ただ、この生活から抜け出したかった。 助けて欲しかった。 【あたしも楽しかったよ?お兄ちゃんの事は好き…だけどやっぱりチビの事考えるとそんなに簡単な事じゃない…】 これはあたしが最後に振り絞った常識と理性。 自分に…浩に向けた最後の駆け引き。 【それは当たり前の事だと思う。だけど俺はそれでも恵莉を好きになったんだ。出逢わなければ良かったとも思った。けどもう後戻りはできない。俺は、恵莉が好きだ。恵莉を救ってあげたいって思った。嘘は付けない。大好きだ】 堕ちた。 誰かに想われる事は幸せな事だ。 こんなに直球で気持ちを伝えてくれる彼。 嫌な訳がない。 あたしが彼に惹かれるのにそんなに時間は掛からなかった。 知れば知るほど好きになる。 誰かを想って想われる、それがこんなに素敵な、幸せな事だってあたしはずっと忘れてた。 11月13日。 この日が忘れられない日になった。 大事な私達の記念日に。
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