日常。

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リリリリリ… 朝方早く目覚ましの音で私の頭はぼんやりと覚醒する。 眠たい目をうっすらと開く。 視線を持ち上げた先、窓の外はまだ暗い。 リリリリリ… 再び私を呼ぶ目覚ましをカチッっと停止させると、隣に眠るチビとパパを起こさぬ様に布団からもぞもぞと抜け出す。 時刻は朝四時。 1月と言うこの季節、寒さで体が身震いする。 部屋の暖房器具をこれでもかという程にフル稼働させ、自分に気合いを入れて、マフラーを巻きながら部屋を出る。 朝起きた時、部屋が暖かくないとパパやチビが可哀想だからね。 凍り付きそうな寒さに耐え、パパのお弁当と三人分の朝食の支度を始める。 「よしっ!できたっと…」 運送業のパパ。 作業着の準備、携帯、お財布、それから出来立てのお弁当を包んで忘れ物の無い様に整える。 準備万端。 さぁ、ここからがまた大きな一仕事。 あたしはチビを起こさない様、控えめのボリュームでパパを起こす。 「パパ?起きて?」 ピクリとも動かない。 もう一度。 「パパ?ねぇ、パパったら…遅刻するよ?」 まだまだ早い朝の五時と言うこの時間、眠たいのは解る。 それでも起こさない訳にはいかない。 こうなれば最終手段。 ゆっくりと布団を剥ぎ取る。 するとパパはやっと反応を見せた。 「さみっ…」 そぅ言いながら剥ぎ取られてゆく布団を引き戻しにかかる。 あたしも負けてはいられない。 「朝だってば!遅刻するよっ!?」 「んぁ!?」 寝ぼけ眼でパパは時計を見ると、一度瞼を落とし、一呼吸ついた。 そのまままた、うっかり寝てしまったら困る、そう思ってあたしは再度呼びかけた。 「パパ…寝ないでね?」 決まって返ってくる返事はこうだ。 「うっせ~なぁ…解ってるよ!!」 解ってる?嘘ばっかり。 放っておけばまた眠りに落ちてしまう事をあなたは解っていないでしょう? そしてあたしはいつもそう心で問いかける。 ここまでしてあげても、起こせばその口からは文句ばかりが飛び出してくる。 「朝飯、またこれ?」 「熱くて食えねぇよ」 …そうですか。 だったら自分でやればいいだろ? あたしは心の中であっかんべーをするのだ。 仕事に送り出すまでが本当に一苦労で、行ってらっしゃいをすると一気に脱力感に襲われる。 朝の弱い旦那から「行ってきます」なんて聞ける日は殆どない。 無言の出勤。 そして私のつかの間の休息。
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