あなたを知った日。

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ある日私は何の気なしに携帯のコミュニティーサイトを開いた。 地元に同じ様な子育て中のママ友を作りたくて。 パパの愚痴なんかも話せるかもしれないし。 そこでの私のHNはさくら。 やっぱり絡みは男性が多くて、それでも私の愚痴なんかを良く聞いてくれる人ばかりで嬉しかった。 1ヶ月も続けると、特定の人としかやり取りをしなくなっていた。 その中に彼はいた。 私は勿論そんな対象として見ているわけはなく、向こうも私の事は可愛い妹みたいな存在だと言ってくれていた。 それが今の状態になるのは割と簡単な事だった。 【私東京タワーって本物見たことないんだ~】 そんな普通のメールのやり取り。 他の男の人とメールをする事に罪悪感はなかった。 コミュニティー内のやり取りだし、旦那なんて直メに電話までしてるんだから。 アドレスを教えたわけでもないし。 そんな安易な考え。 【マジ?じゃぁ今度俺が絶対見せてやる!】 嘘でも嬉しかった。 コミュニティーに登録されている彼の所在地は遠いいし、何よりお互いに結婚しているのに、そんな小さな約束が実現する訳はない。 実現してはいけない事だって重々承知している。 【わーぃ!約束ね!】 そんな返事をしながらも心はちゃんと現実の今にある。 家族の夕食の支度をこなしながらのメールのやりとり。 私はどこか現実と切り離した架空の世界を作っていた。 すると、彼からの返事は想定外の物だった。 彼を現実と分けて認識していた私は一気に結びつけさせられた。 ドキドキしなかったと言えば嘘になる。 言われて嫌な事じゃない。 でも返事に困ったのも確か。 そんな風に思った事なんて無かったから。 【俺はさくらのお兄ちゃん以上にはなれないかな?】 つまり彼氏って事ですよね? 結婚してて子供もいる私に? あなただって家庭があるじゃない。 誰にでも言ってるんじゃないの? あたしは騙されたりはしない。 人を疑ってかかるのはあたしの良くない癖。 だけどこの場合それは正しいと思った。 危ない橋は渡らない。 母である以上…妻である以上。 【気持ちは凄く嬉しい。けどあたしやっぱりチビの事思うとお兄ちゃんに好きだなんて言えない…】
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