873人が本棚に入れています
本棚に追加
久しいな。
『彼』は内心で呟いた。前に物質界へ召喚されたのは、いつのことだっただろうか。
『……私を喚び出したのは、お前達か？』
パニックに陥っている周囲を余所に、二人だけ『彼』から逃げない者がいたのだ。
『彼』が彼等に声を掛けた途端、驚愕に見開いた目が通常サイズに戻り、二人は冷静を装っていた。
なかなかやるな。『彼』は幼い召喚者達の矜持に、ほんの少しだけ舌を巻いた
「そう、俺達があんたを喚び出した」
偉そうに『彼』をあんた呼ばわりした方が、もう一人に後頭部を叩かれた。
「喚び出したものが何であれ、敬意を払うべきだと教わっただろ!?」
「……お前、目の前で、何であれって言い方する方が失礼じゃね？」
「あ」
こんなやり取りを前も見たな。
『彼』はそう思いながら目を細めた。
最初のコメントを投稿しよう！