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最初から素で接していたヨシトならいざしれず、彼の身内と言えども『年上』で『初対面』の人にまで同じ態度はとれない。
「イーシュラーダって……、これはどうもご丁寧に。カナ・オハラ、ヨシトの姉です」
ヨシトの友達にしては、かなりタイプが違うなあとカナは内心で思っていた。
「カナ? ……カナ・オハラって……もしかして、『紅蓮の魔女』!?」
ユウキは素っ頓狂な声を上げる。
「うわぁ、その呼び名久し振りに聞いたぁ……」
カナが苦笑する。
「何それ」
「レディースチーム、『不死鳥(フェニックス)』の初代総長の通り名だよ。その名の通り、火炎系の呪が得意で、当時の学年トップ。うちの学園の伝説の人だぞ? ……知らねーの?」
姉弟なので、ヨシトはカナが主席で卒業したのを知っているが、レディース? 総長? 何それ、美味しいの? 状態である。
「……カナちゃん?」
ジト目のヨシトに、はにかんだ笑顔でカナはパタパタと手を振った。
「やーね、うちの妄想親父の所為で、ちょっぴりグレてたあたしの暗黒歴史、掘り起こさないのっ☆ ……ってか、知らない人だっているんだから、吹聴したらシメんぞ、コラ」
可愛いはにかみ顔から一転、カナは当時の迫力そのままにユウキへ凄んだ。
二つ名は伊達じゃない。青冷めたユウキは、壊れた玩具のように縦に何度も首を振る。
「カナちゃん、ユウキは言いふらしたりしないと思う」
腰が引けてるユウキを庇い、ヨシトがやんわりとカナを宥める。
「一般常識がかなり微妙で、嫌な奴だと思われがちだけど、根は素直な奴だから」
「あれ、もしかして俺、貶(けな)されてる?」
「いや、事実だろ? それに、誉めてないけど、貶してもない」
総合的にはいい奴だと思うよとヨシトが締めくくった。
「……微妙な庇い方だけど、ヨシトが言うなら間違いないか。よし、許してやろう」
先程とは一転、カナはユウキに艶やかな笑みを浮かべてみせた。
「ありがと。……でも、僕はウヤムヤにはしないよ……? どういうことか後で聞かせてね、カナちゃん?」
「う。や、やだな、若気の至りだってばー……」
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