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だが。
「……誓約?」
誓約の術って、約束を破ったら死ぬかもしれないとかいうあれか。ユウキの話が本当なら、ヨシトがかけたに違いない。ヨシトだけなら威力は知れてるが、ユウキが絡んでるなら、話は違う。
一瞬でカナの目が据わった。
「……ちょっと、うちの弟に何してくれちゃってんの? 馬鹿なの? 死ぬの? こちとら現役離れて久しいけど、『紅蓮の魔女』の二つ名は伊達じゃねぇんだよ?」
「……カナちゃん、ユウキを怖がらせるのはやめて。ごめん、うちの姉、ちょっとブラコン入ってるから……」
そう言うヨシトは少しシスコンの気がある。
「な、仲がいいんだな……」
普通の兄弟ってこんななんだろうかとユウキは冷や汗を流した。
カナの怒りをやり過ごし、ヨシトはユウキを自分の部屋へと案内した。
こざっぱりとしたロフト付き六畳の部屋に勉強机。その脇には専門書がぎっしり詰まった大きな本棚が存在感を醸し出している。
ロフトを寝室扱いにしているのだろう、ベッドは置いていない。そしてロフトの下の部分がクローゼットになっているため、余分な物は全て収納され、すっきりを通り越して何もないイメージである。
蛇足だが、カナの部屋も作りは同じで、こちらはクローゼットに入りきらない服を外のハンガーラックにかけているが、やはりすっきり綺麗だ。
俺の部屋とは大違いだ。ユウキは物が散乱する自分の部屋と比較して、ヨシトに負けた気がした。
因みに、ワンコはカナが癒やしを得るために自分の部屋へと連れて行ったので、ここにはいない。
「カナちゃんが誓約の術にあんな拒否反応起こすとは思わなかったな」
「お前、自分がかけたら強制力が弱いからって、認識甘い。普通嫌だろ、うっかりしたら死ぬかもしれないなんて」
呆れた口調のユウキにヨシトは反論出来なかった。
「それに、普通オリジナル部分入れなくても強いんだよ、レベル5の術は」
自覚しろよ天才。
ヨシトはうなだれた。
「……僕の場合レベル5でも、普通のレベル2より劣るから、…………」
「……悪かった」
それを言ったら、ユウキは魔法自体使えない。
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