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ユウキは基本的に徒歩である。イーシュラーダ家の長男ともあろう者が、と富裕層の者達に陰で笑われることがあっても、彼はそのスタイルを崩さない。
元々庶民的なユウキは、いかにもセレブですといった送迎を好まないのである。
過去に身代金目当ての誘拐に合いそうになったことは幾度もあったが、ただでさえ周囲から浮きすぎているのに、これ以上遠巻きにされてたまるかという意地もあり、ユウキは「せめて、学校からの行き帰りくらいは歩かせてくれ」と家族の反対を押し切って徒歩通学を続けている。
駅からは徒歩十分、ヨシトの家からは徒歩三十五分、学校からは二十分ほどの場所にイーシュラーダ家は建っている。
だが、敷地内に入ってから車で三から五分ほど移動しなければ、母屋には辿り着けないという広大な敷地面積。某何とかランドなどを想像して頂ければわかり易いだろう。
入り口である門ひとつとっても、警備の担当がいるくらいだ。
「ただいま」
「お帰りなさいませ、ユウキ様。今お車を回します」
ユウキが大きな門を開けるのを好まないことを知っている彼らは、門脇の通用口を開いた。
「こちらミカド、ユウキ様は無事帰宅した。後は任せる」
『了解した。今日は大変だったみたいだな』
勿論ユウキをSPである彼らが影から守っているが、基本的にはノータッチの姿勢を貫いている。
「流石に火事は不味いからな、危うく飛び出すところだった」
『連絡が来て、旦那様と奥様がガッツポーズをしてたぞ』
「友達と馬鹿やってってとこがポイントなんだろうな。全く、こっちの身にもなって欲しいもんだ」
『まあそう言うなよ。申し分無しの友達なんて初めてだから、喜んでんだろ』
ユウキがイーシュラーダの名を持つ限り、何かしら意図のある人間が近寄って来るのも仕方のないことだ。
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