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その点、ヨシトは親も研究所勤めで権力に興味はなく、素行も問題なし。カナはちょっぴり問題があった時期もあるが、現在更正し大学院生。
過去に何度か、イーシュラーダの名前目当てで近づいてきた友人もどきがいたため、当主であるラルクウッドも親バカと言われるのを承知で、ユウキの身辺には気を使ってしまうのである。勿論ユウキには内緒で。
しかし、そこにオハラ家のプライバシーは存在しない。
身元を調べるとはそういうことだ。
「ただいまー」
母屋に入るとすぐ執事のスズキがユウキを出迎えた。
「お帰りなさいませ、ユウキ様。居間で旦那様と奥様がお待ちですよ」
「……うわー、どっちも帰ってんのかー……」
二人からの説教コースは厳しいと肩を落とすユウキを見て、スズキは目元を和らげる。
「仕方ありませんね、危うく学校を燃やすところだったのですから」
「……スズキも知ってんの?」
恐る恐る尋ねたユウキに、スズキはにこやかな笑顔で答える。
「屋敷の者はほとんどが知っておりますよ」
「うあー、マジで!」
「私の若い頃は、校舎の窓ガラスを壊してまわったり、盗んだバイクで走り出すくらいのヤンチャなどをやりましたが、学校自体を燃やそうとするなんて、なかなかやりますね」
「……スズキ、それ、冗談だよな?」
「……勿論でございます」
前時代、大戦前のある特定層のバイブル的な歌の歌詞は、どうやらユウキにはさっぱり理解出来なかったようだ。
百年以上前の歌だし、しょうがないかとスズキは内心で苦笑した。そんなお茶目な執事のロバート・スズキは今年で五十歳、なかなかの切れ者と名高かったりする。
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