873人が本棚に入れています
本棚に追加
「何だ、今帰って来たの?」
げ、とユウキは小さく呻いた。
「……ただいま」
「学校燃やしかけたんだって?」
「あー、まあな……」
親より面倒なのが来たとユウキが内心で深く溜め息をつく。
「ほんと兄さんて、昔からクダラナイことしかしないよね」
「……うっせーな、お前に関係ねーだろーが。帰って早々に喧嘩うるなよ」
一つ下の弟、ノゾムとユウキはとことん合わない。別に嫌いじゃないのに、何故か嫌味ばかり言われる羽目になるので、ユウキはノゾムが苦手だ。
因みに、母親似のユウキに対し、ノゾムは目と髪の色がどちらも黒く父親似である。
ノゾムは鼻を鳴らした。
「どうせ力のコントロール失敗したんだろ。しょうがないな」
「ちげーよ、友達と召喚の自主連しててしくじったんだっつーの!」
「……友達?」
「おう、すげー奴なのに自覚なくてさー。マジすげーんだ、レベル5の呪とか普通に唱えちゃったりするんだぜ! おまけに、本物の天才!」
自分のことでもないのに、ユウキは自慢気にヨシトを誉めちぎる。ノゾムは僅かに眉を寄せた。
「へぇー……、友達……ね。もしかして、帰るのが少し遅かったのは、その『友達』と寄り道でもしてたわけ?」
「まーな」
「……ふぅん、別にどうでもいいけど」
どうでもいいならいちいち聞くなと思いながら、ユウキは両親がいるであろう書斎の方へ、溜め息をつきながら歩いて行った。
スズキは軽く苦笑する。
「……素直に遅いから心配したと言えばよろしいのに」
「スズキ、うるさい」
ノゾムは舌打ちした。
ユウキも知らないことであるが、その実、ノゾムは超のつくブラコンだ。それなのにユウキにはツンツンでデレないので、ユウキは勿論のこと、彼が兄大好きっ子だと気付いている人間は極少数である。比率はツン九十九、デレ一程度か。
「その『友達』とやら、兄さんに有害なら……潰す」
……ユウキに友達がいないのは、本人や家柄だけのせいではないかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!