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「流石に今回のことは驚いた。学校には訓練施設があったはずだが、どうして図書館の裏で呪の練習なんか……」
「いや、ちょっと違うんだ。今回の試験てのが召喚で、友達とこっそり練習したくて、つい……」
SP達から連絡が来ているので、ラルクウッドはほとんどの概要を掴んでいる。が、本人からちゃんと聞いてやるのがイーシュラーダ家の子育て方針だ。
「友達と一緒? その友達はお前の力のことを知ってるのか?」
「うん。最初に言った」
「最初に? ……それで?」
「そいつさ、すげー奴なのに、自覚ないんだ。何でか、呪の具現化率が低くて苦労してたっぽいから、こいつならって思って。最初はそんな感じだったんだけど、とってもいい奴なんだ」
そう言えば、とラルクウッドはヨシト・オハラについての調査書の内容を思い出していた。
(確か、…………なるほど、具現化率が低くなるわけだ)
確かにユウキのブースター能力と相性がいい。それも抜群に。
「だからさ、そいつと俺が訓練施設なんかで練習したら注目浴びちゃうから、つい……ゴメンナサイ」
「まあ、やってしまったものは仕方がない。それで、何を呼び出したんだ?」
「それがさ、ケルベロス属の子犬なんだ! 凄いだろ!?」
特Aクラスだなとラルクウッドは口の中で呟いた。
「でも、子犬じゃ評価されないんだってさ。呼び出せただけで凄いと思うのにさー……」
「そうなのか? 教官は誰だ?」
ラルクウッドが尋ねると、ユウキは微妙に目を泳がせた。
「え、あ、や、別に……」
「大丈夫、辞めさせたりなんかしやしない」
それが本当なら、ちょっとした指導はするだろうがね。ラルクウッドは口には出さずに、内心でそう答えた。
何百年の時を経ている幻獣でも、呼び出し易いものと、そうでないものがいる。ましてや、ケルベロス属ならば間違いなく高次元召喚でしか呼び出すことは出来ない難易度の生き物なのである。
はっきり言って、評価の基準が間違っている。
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