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「カナもまだまだ、ちっちぇー生き物だよ? 愛してるぅ!」
力いっぱい娘を抱きしめてから、ルナは痛みに呻いた。
「……縫ったばっかなの忘れてたぁ……」
疲労困憊の筈なのに、変なスイッチが入ってしまっているのか、ルナのテンションは高い。
「そんで、この子は何の適性があったの?」
水系だったら嫌だなあと思いながらカナが尋ねた。
四大精霊のうち、カナには炎の加護がある。精霊の加護は性格にも影響を与えるという研究結果が出ており、多分に漏れず、カナは水系の人間と相性が良くない(彼女の六年間の人生での経験で、という注釈が入るが)。
すると、ルナは内緒の話をするが如く、娘の耳に囁いた。
「……だって。面白いよねぇ」
「変なのー。そんな人いるんだ」
「うん、『きしょーかち』だって先生が。きしょーかちだけど、弊害がどーのこーのって」
適当な説明。これまたいつものことなので、自分で調べてみようと思うカナだった。
「弱くても逞しく育ってくれればいい!」
「パパうるさい☆」
黙れと言わんばかりにカナはユウスケの臑を蹴り飛ばした。痛みにうずくまる彼を一瞥し、カナは一人ごちる。
(頼むから真っ直ぐ育ってね。間違っても妄想癖だけは持たないでちょうだいよ?)
心から祈る彼女を責められる者は、誰もいなかった。
かくして、物語はこの十七年後から始まるのであった。
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