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「あたし何も、酷い事なんか言ってないじゃんか!」
「うっさい!バカ兎!」
「っ~……!あのね!この際だからはっきり言わせてもらうけど、あたしは鷹乃のパンチングマシーンじゃない!
毎回毎回全力で蹴ったり殴ったりされたら、本気で死ぬわっ!」
と、頬に浮かび上がった綺麗な紅葉を見せ付けながら、あたしは珍しく猛抗議する。
本当に今更だけど、めちゃくちゃ痛いんだよマジで!
鷹乃は手加減ってものを知らないから!
昔っから幾度となく鷹乃の暴力に付き合わされてるあたしならともかく、普通の人があんな殺人キック喰らったら間違いなく気絶するわっ!
「も、元はと言えばあんたが急に、変な事言うからいけないんでしょ!!」
「は?変な事?」
「だから!……か、かかっ……」
「かか?」
自分でも分かる程不機嫌になっているあたしは、いつもより低い声になっている。
反対に鷹乃は、普段よりも小声になり、サッと視線を斜め下に落とした。
おい。何故ここで赤面するんだ……。
意味が分からん。
「かっ、かわっ、かわっ……」
「川?」
「かわっ……かわ……」
「皮?」
「…………~~ッ!!」
ちょいちょいちょい。
どうしてそこで、あたしを睨む。
小さな体を小刻みに震わせ、唇を噛み締める鷹乃。
怒って、るのかな……?
でも相変わらず顔は赤いし、いつものような覇気は感じられない。
むしろ今の彼女は、小動物のようにも感じられた。
うん。大人しい時の鷹乃は、やっぱり愛らしいんだよね。
お・と・な・し・い。……時は、ね。
「………………」
「鷹乃?」
「……だ、だからっ!!あんたが、……その、か、か、……可愛いって、言ったから……」
「………………」
…………はい?
…………ん?
「え、えと……それだけ……?」
「………………」
「………………」
待て待て待てーい。
じゃあアレか。
あたしが鷹乃に『可愛い』って言ったから、こんな大衆の面前で思い切りビンタを喰らったと……。
……そゆ事?
いや、そういう事なんだよね?
今の鷹乃の言い方からして。
「ちょっと待ってそれ怒るとこ!?ねぇそれ怒るとこっすか!?」
別にけなしたり馬鹿にしたわけでもなく、あたしは素直に鷹乃を褒めたわけでして!
なーんでそれで、あたしがビンタされにゃあかんのですか!
おかしいでしょ!?
理不尽すぎて逆にポカンとするんですけど!
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