SCENE.1 邂逅

10/11
前へ
/398ページ
次へ
「あはは・・・。ならまた明日の早朝に・・・。おやすみなさい。」 「ああ、おやすみ。」 優希は、迅の立っていたドアから家に入った。 暫く歩き、自分の部屋の前に辿りつく。 相変わらず広い。つくづくそう感じる。 廊下もケートラなら2台くらい余裕で通れる位幅がある。 自分の部屋のドアを開ける。 中に入り、鍵をかける。 優希の部屋は元々、物置として使われていたが、優希がこの家に住むことになったその日に物置を改造し、優希に提供した。 そのためか、部屋はそこそこ広いが、優希自身、あまり家具を置く事は無く、以外に素っ気ない感じだ。 あるのはタンスとクローゼット、少し洒落たテーブルと椅子、そしてシングルベッドだ。 それと部屋の隅に、銀色に光る鉄柱が、天井と床を繋いでいる。 優希はシングルベッドに倒れるように横になった。 それと同じように、部屋中にコンコンッと軽快な音が響く。 「(来たか・・・。)いいぞ~。」 その言葉を合図に、先程説明した鉄柱を中心に、天井に直径2mの穴が空いた。 その穴から、まるで消防士のように鉄柱を伝い、滑り降りる一人の人間。 「・・・何か用か?斉藤・・・。」 「用があるから来たの。」 「そいつは失礼した。」 この滑り降りてきた人物、斉藤美佳(サイトウ ミカ)は、ベッドに倒れている優希に話しかける。 ちなみに、美佳の部屋は優希の部屋の真上なのだ。 あの鉄柱は、優希の部屋と美佳の部屋と繋がっているのだ。 「峠に行ってたの?」 「まあな、結局走れ無かったがな。」 「何かあったの?」 美佳の質問に、一拍置いてから答えた。 「バトルの最中に乱入しちまった。」 「あ~らら~、やっちゃったのかぁ。」 「ああ、やっちまったよ。」 「それで喧嘩売られた?」 「いや、必死に何度も謝ってた。」 それから色々話しているうちに、優希は眠ってしまった。 「えぇ!?ちょっ!寝ないでよ~!これから盛り上がるとこなんだから~!」 美佳の必死の呼び掛けにも関わらず、一行に目を覚まさない。 「起きてよ~!!あの『鈴木さんキッチン爆破事件』の真相教えるから~!!」 知った所で何もならないような話題である。
/398ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1325人が本棚に入れています
本棚に追加