1324人が本棚に入れています
本棚に追加
/398ページ
深夜の朝日峠(アサヒトウゲ)を、麓に向かってアクセル全開で走っている2台の車。
1台は赤いマツダのRX-7・FD3S。(以下FD)
FDのドライバー、沖田英二(オキタ エイジ)は散り始めた桜を背景に、FDのアクセルを踏み付ける。
桜が道路に落ちようとした時、丁度FDがその上を通り、桜を舞い上げる。
そしてすぐ後ろからきた白いMR-Sのフロントウィンドウをなぞるようにし、また桜が舞あがった。
そしてそのMR-Sのドライバーである遠藤辰也(エンドウ タツヤ)は「チッ」と舌打ちをしながらFDのテールを睨みつける。
もうお分かりだと思うが、この2人は只今バトル真っ最中である。
それも最速争いだ。
正確には、朝日峠で現役最速を誇る英二に、辰也が挑戦しているという形である。
辰也は、まだ走り初めて1年弱しか経っていないのにも関わらず、最速である英二とタメを張れる程の才能の持ち主だ。
対する英二も、当然ながらこれが初めての防衛戦では無い。
それこそもう数えるのも面倒なほど死線をくぐり抜けてきた走り屋だ。
才能は辰也の方が上だが、積み上げてきた経験は英二の方が上だ。
そんな状況が、今現在上手い事綺麗に平行線を保っている要因となっていた。
最初のコメントを投稿しよう!