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コースは終盤に入った。
ここからタイトなコーナーが増えてくる。
Zは相変わらずハイスピードレンジのドリフトで、コーナーを抜けていく。
ワンエイティはふらついていて、どこか危なっかしい動きをしている。
Zがコーナーを曲がるたんびにギャラリーが湧き立つ。
それもそうだ。車重のあるZで、峠のタイトコーナーをかなりのスピードでドリフトしているのだから。
それに比べ、ワンエイティはどうだろう?
確かに速いが、地味なグリップ走行はギャラリーを盛り上げるには物足りない。
おまけに低速コーナーの連続で、かなり車速が落ちている。
結果的に、Zの走りに注目が集まるのは当然なのだ。
コーナーも残りが数えられる程消化した。
決着が近い。
ここで優希が動いた。
左の低速コーナー。
Zはスピードを少し控え目にして、コーナーに突っ込み、クリッピングポイントを少し奥にとる。
シビアなラインのせいで一瞬ワンエイティとの車間が開く。
だがZはその代わりに、コーナーの立ち上がりでワンエイティ以上の速度を叩き出す事に成功。
開いた車間は数瞬で無くなり、Zのノーズを開いたスペースに捩じ込む。
「ッ!!」
そして男は驚愕する。
狭く、短い峠道のストレートで、完全に並ばれたのだから。
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