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狭い道路をアクセル全開で加速していく。
エンジンはがなり、Zのチタンマフラーからバックファイヤーの閃光。
出来の悪い映像のように、風景は前から後ろに吹っ飛ばされるが、隣にいる車は後ろから前に進んで来ている。
Zの右フロントタイヤと、ワンエイティの左フロントタイヤが完全に並ぶ。
ピッタリ並んで、2台は右ヘアピンコーナーに向かって加速していく。
先にブレーキを踏んだのはワンエイティだった。
インベタの進入ラインは、アウトから進入するよりキツイからだ。
減速していくワンエイティを尻目に、Zは全く減速しない!
左車線を突っ走り、ワンエイティより約1秒遅くブレーキング。
ブレーキローターは真っ赤にほとばしり、テールランプの光が増す。
フロントタイヤからは悲鳴にも似たスキール音が響く。
荷重をフロントに移動させ、ステアリングを右に切り込む!
同時にリアタイヤがブレイクし、スライドが始まる。
右のフロントタイヤがオレンジ色のセンターラインの上に乗る。
リアバンパーはガードレールギリギリを通る。
リアタイヤからは白煙が巻き上がる。
それがギャラリーにかかる。
繊細なアクセルワークと、小刻みにステアリングを動かし、Zをギリギリの所でコントロールする。
優希はフロントガラス越しに、コーナー出口が見えた。
(行けッ!)
アクセルを思いっきり踏み込む。
エンジンがレッドゾーンを目指して回転が上がる。
トルクの増大と共にリアタイヤのグリップが徐々に回復していく。
ガードレールをなぞるようにドリフトする。
タイヤのグリップが完全に回復したのと同時にコーナーを抜け、ワンエイティも完璧に抜き去った。
「うっっしゃあぁぁ!!」
Zの車内に、優希の雄叫びが響いた。
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