SCENE.3 実力

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狭い道路をアクセル全開で加速していく。 エンジンはがなり、Zのチタンマフラーからバックファイヤーの閃光。 出来の悪い映像のように、風景は前から後ろに吹っ飛ばされるが、隣にいる車は後ろから前に進んで来ている。 Zの右フロントタイヤと、ワンエイティの左フロントタイヤが完全に並ぶ。 ピッタリ並んで、2台は右ヘアピンコーナーに向かって加速していく。 先にブレーキを踏んだのはワンエイティだった。 インベタの進入ラインは、アウトから進入するよりキツイからだ。 減速していくワンエイティを尻目に、Zは全く減速しない! 左車線を突っ走り、ワンエイティより約1秒遅くブレーキング。 ブレーキローターは真っ赤にほとばしり、テールランプの光が増す。 フロントタイヤからは悲鳴にも似たスキール音が響く。 荷重をフロントに移動させ、ステアリングを右に切り込む! 同時にリアタイヤがブレイクし、スライドが始まる。 右のフロントタイヤがオレンジ色のセンターラインの上に乗る。 リアバンパーはガードレールギリギリを通る。 リアタイヤからは白煙が巻き上がる。 それがギャラリーにかかる。 繊細なアクセルワークと、小刻みにステアリングを動かし、Zをギリギリの所でコントロールする。 優希はフロントガラス越しに、コーナー出口が見えた。 (行けッ!) アクセルを思いっきり踏み込む。 エンジンがレッドゾーンを目指して回転が上がる。 トルクの増大と共にリアタイヤのグリップが徐々に回復していく。 ガードレールをなぞるようにドリフトする。 タイヤのグリップが完全に回復したのと同時にコーナーを抜け、ワンエイティも完璧に抜き去った。 「うっっしゃあぁぁ!!」 Zの車内に、優希の雄叫びが響いた。
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