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ワンエイティのフロントガラス越しには、先程まで後ろを走っていたZのリアテールがリトラクタブルによって照らされている。
(負けた・・・か。)
男は安堵のため息をついた。
あの容赦の無いプレッシャーから解放された事や、事故らずオーバーテイクされた事など、色々な不安から解放された。
コーナーは残り3つ程。
いくら何でも、抜き返す事は出来ない。
男は諦めたようにフッと笑うと、静かにアクセルを抜いた。
麓のゴール地点には、迅と美佳がいた。
優希が朝日峠で初バトルをすると聞いて、飛んできたのだ。
その優希は、たった今最終コーナーを白煙を巻き上げながらドリフトでクリアし、そのままゴールラインを越えた。
「お見事。」
美佳が呟く。
迅はそれに相槌を打った。
「確かに。前より速いんじゃないか?」
「もうお兄ちゃんのSWじゃ追い付けないんじゃない?」
「馬鹿を言うな。ストレートなら排気量の差で仕方ないが、コーナーなら負けんぞ。」
「すぐ負けん気出すんだから。」
笑いながら会話をしている兄妹の前に、優希のZが轟音を響かせながら停まった。
「迅さんに斉藤。どうしてここに?」
「さっき情報が入ってな。気になって仕方なくて見に来たのさ。」
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