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優希が朝日峠でバトルしてから、およそ10時間が経った。
昨日のバトルの興奮を、体が覚えていて結局眠る事が出来無かった。
そして昨日の「あれ」。
英二の宣戦布告。
まさかああまでハッキリ言われるとは思わなかった。
おまけにあの時、駐車場にいた走り屋のほとんどは聞こえていただろう。
全くどうして、こんな事になるんだろうか。
やるしかないのだろうか?
やるとしたら全力でやらなければならない。
それが相手にたいする最大限の礼儀。
だが避けられるのなら、避けたい。
何だか、たった一回のバトルで今まで積み上げてきた関係が崩れそうで怖い。
ならば、自分はどうしたらいいのだろう?
そう頭を抱えていた時、天井からノックする音が聞こえた。
「どうぞ。」
ベッドに寝転がりながら素っ気なく返事をした。
その声を合図に、美佳が鉄柱を伝って降りてきた。
「やあナマケモノ。」
「・・・へいへい。」
「も~。ノリ悪いな~。」
「・・・今そんな気分じゃない。」
そこで会話が止まる。
何処と無く重たい沈黙が辺りを支配する。
「昨日の事気にしてんの?」
そんな沈黙を破ったのは美佳だった。
優希は静かに頷く。
「走るしかないんじゃない?」
この言葉に、優希は反応する。
「私達走り屋は、走りで会話してるようなもの。そういう事でしか話せない。」
次々と言葉を発する美佳と、未だ寝転がったまま黙っている優希。
そんな優希に構わず、美佳は話し続ける。
「走りの問題は、走る事でしか解決出来ない。だから走れ、優希。」
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