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陽は傾き、空は夕焼け色に染まる。
優希はZに乗って、ある場所に向かっていた。
法定速度を守りながら暫く走り、漸く目的地に着く。
朝日峠だ。
ここならあの人、沖田英二がいると思った。
確証なんかない。
ただ漠然と、そう思っただけだ。
走り屋のカンとでも言うべきなのだろうか?
麓の駐車場の横を通りすぎ、頂上に向かって走りだす。
コーナーでは少しタイヤが鳴る程度の速度で曲がる。
あらゆる所に目を向ける。
チェーンの着脱所、路肩。
バックミラーにまで目を移す。
いないのだろうか・・・?
峠も中盤を過ぎて、そんな事を考え始めた時だった。
コーナーの向こうから対向車が来た。
優希は反射的に対向車に目を向ける。
その対抗車の正体は、自分が捜していた赤いFDだった。
官能的なロータリーサウンドを響かせながら、前方からやってくる紅いFD。
間違いなく英二だ。
ZとFDがすれ違う。
そして直ぐさま優希はZのサイドブレーキを目一杯引き、クラッチペダルを踏みつけ、ステアを右に切り込む。
リアタイヤはロックし、フロントを軸にZは時計回りに180゚くるりと回った。
そしてすぐクラッチを繋げながらアクセルを踏み込み、スキール音を響かせながら、FDを追って発進させた。
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