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「・・・ありえないよ。」
美佳は、信じられない表情をしながら呟く。
「だが事実だ。これは優希自身から聞いたからな。なんでもアイツは、どんなバトルの前にも、一先ず寝てるみたいだしな。そんだけ優希は場数を踏んでるって事でもあるんだろう。」
迅は淡々と語っていたが、内心優希にたいして苦笑いをしていた。
「・・・よくこんな事を言うよな。」
迅がまた話始める。
美佳はそれに耳を傾けた。
「10回の練習より、1回の本番。俺はその通りだと思う。練習で培った技術より、本番で体験した経験値の方が密度が高いからな。だからあの優希のドラテクは走り込みより、立て続けのバトルによって身につけたものじゃねぇかな?」
一気に話して、一息つく。
迅はポケットからタバコとライターを取り出し、火を付ける。
タバコの先端から白い煙が立ち上る。
「あっ、ちょっとぉ。タバコやめてよ~。」
「おっ、わりぃ。」
迅は携帯灰皿に、吸ったばかりのタバコを名残惜しそうに押し付けた。
同時に、張り詰めていた空気は何処かへと消えてしまっていた。
そして数分経った朝日峠には、大量のギャラリーが押し寄せていた。
どうやら昨日の事が、誰かに見られていたらしい。
頂上には英二と、その愛車である赤いFDが停まっていた。
「なぁ英二・・・。」
英二に話し掛けたのは、この前英二とバトルしていた遠藤辰也だった。
「何で俺より先にアイツと決着をつけるんだよ。まず俺からだろうが。」
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