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下からエキゾーストが聞こえてくる。
段々近付くのがわかる。
もうすぐそこだ。
ギャラリーも自然と緊張してしまう。
ざわつきが無くなる。
皆が皆、顔や背中に冷や汗をかいている。
そしてついに、コーナーの先から、
漆黒のボディに彩られ
野獣のような排気音を放ちながら
英二が待ち望んでいたZが
姿を見せた。
Zはスタート地点と逆向きに停まった。
重低音のアイドリングが、静寂に満たされた空間に響く。
声が出せない。
雰囲気がそうさせているのだ。
英二にたいする激励の言葉。
優希にたいする応援の言葉。
全く出せないのだ。
まるで声帯が無くなったかのように。
そんな時、Zのドアが開いた。
ゆっくりと姿を現すその青年。
靴が完全にアスファルトと密着する。
膝が伸びる。
当然の行動が、ギャラリーにとってはかなり大きく写った。
優希が完全にZから降りて、英二と向き合う。
その瞬間、2人の間に突風が吹き付けた。
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