SCENE.5 対最速

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下からエキゾーストが聞こえてくる。 段々近付くのがわかる。 もうすぐそこだ。 ギャラリーも自然と緊張してしまう。 ざわつきが無くなる。 皆が皆、顔や背中に冷や汗をかいている。 そしてついに、コーナーの先から、 漆黒のボディに彩られ 野獣のような排気音を放ちながら 英二が待ち望んでいたZが 姿を見せた。 Zはスタート地点と逆向きに停まった。 重低音のアイドリングが、静寂に満たされた空間に響く。 声が出せない。 雰囲気がそうさせているのだ。 英二にたいする激励の言葉。 優希にたいする応援の言葉。 全く出せないのだ。 まるで声帯が無くなったかのように。 そんな時、Zのドアが開いた。 ゆっくりと姿を現すその青年。 靴が完全にアスファルトと密着する。 膝が伸びる。 当然の行動が、ギャラリーにとってはかなり大きく写った。 優希が完全にZから降りて、英二と向き合う。 その瞬間、2人の間に突風が吹き付けた。
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