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どうやって収拾をつけたらいいか分からなかったその時、突然どこからか着信音が流れ始める。
「あっ、すいません。」
音の発信源は、どうやら優希のポケットに入っているケータイのようだ。
通話ボタンを押して、電話に出る。
「もしもし?」
『こらぁ優希!!一体どこほっつき歩いてんの!!?』
突如受話口から響く叫び声。
その余りの大きさに近くにあた英二と辰也は1歩たじろぐが、優希は少し耳からケータイを離すだけだった。
「言っただろ?峠を走りに行くって。」
『それにしたって帰ってくるのが遅いの!!今日はお兄ちゃんと一緒にSWのメンテナンスするんでしょ!?』
それを聞いて、優希が「あぁ!」と思い出すようにリアクションする。
「そういやそうだったな。けど、もう11時だぜ?迅さん寝てるだろ。」
『大丈夫よ。お兄ちゃん夜型だもん。・・・・・・多分。』
最後の多分は、小声で言っていたが
「おい、今多分って言ったよな?」
優希にはばっちりと聞こえていた。
『どうでもいいから早く帰ってきてよ。』
「え?いや、それはちょ-」
『わかったね?』
電話で表情は分からないが、受話口から殺気が流れてくるのを感じた。
突然背筋が凍るような錯覚に陥る優希。
「・・・はい。」
結局優希が電話の向こうから伝わってくる殺気にくじけ、帰る事になった。
終話ボタンを押し、電話を折り畳んでズボンのポケットに仕舞い込む。
「すいません、今日は帰ります。」
「今の電話、彼女かい?」
と、辰也が聞くが、優希は首を横に振り、それを否定した。
「居候してるとこの娘さんなだけで、それ以上の関係じゃありませんよ。」
少し声のトーンを落としながらそう答える。
「あの、今日は帰ります。本当にご迷惑をおかけしました!!」
「ああ、また来いよ。」
「はい、是非。」
そう返事をし、優希は愛車であるZに乗り込み、朝日峠を後にした。
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