2人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言って笑う羽忌の表情はなんだか困ったような笑顔だった。
菜々子と仔猫を引き合いに出され、そういえばあの二人のせいで倒れたというのに、何処へ行ったのだと思った。
「中谷さん、二人なら先輩が厳重にお仕置きしておいたそうですから」
桔梗の心情を察したのか、由比がそう告げた。
処罰とは言わず、お仕置きと言う辺り、由比もあの二人には宮古同様厳しいようだ。
その宮古の厳重なお仕置きとやらがどれほど恐ろしいものなのかは知らないが、宮古の性格を考えるとかなり精神的にきそうだという事は察した。
「中谷さんの為ですから」
由比が微笑み首を傾げる。
子供みたいな表情で言われても、なんだか少しだけ怖かった。
「じゃぁ由比ちゃんはきょーちゃんの事信用できるんだよね?」
羽忌はまるで尋問でもするかのような言い方をする。
「きょーちゃんなら大丈夫だよ。こんな事で由比ちゃんの事嫌いになったりしないって」
えらく信用されたものだ。
それに、嫌われるような事を由比がしているとでもいうのだろうか。
「でしょ?きょーちゃん」
桔梗の両手で掴むと、羽忌は正面から桔梗の目を見つめた。
「由比ちゃんの事、嫌いにならないでよ」
羽忌の目は懇願するというよりも、決めつけるような感じだった。
嫌いになるはずがないでしょう?
羽忌の目がそう語り掛ける。
羽忌らしくないと思ったが、たかだか一年身の周りの世話をしたぐらいじゃわからない事だらけだろう。
現に、桔梗は羽忌や由比の交遊関係も誕生日も、何も把握していないのだ。
もちろん、由比が悪い人じゃ無いのはわかっているが。
「内容にも……よりますけど」
その言葉に、羽忌は表情を歪めた。
最初のコメントを投稿しよう!