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窓の外は、酷い嵐だった。
風は、木々をなぎ倒すのではないかと思える勢いで森を駆け抜け、雨は、硝子を破いてしまうのではないかと思える程激しく窓を叩き、時折突風が吹いて、屋根が飛んでしまうのではないかと不安になる位、家全体が鈍く軋む。
久々の嵐や、初めて体験する嵐で不安になった人々は、家の中央に集まり、身を寄せ合って嵐が通り過ぎるのを待つ。そんな家族が殆どなのに対して、かっぷくの良い中年の町長は、書斎で一人、窓の外を眺めていた。
元々乾いた土地柄のため、これほど激しい嵐は滅多に経験することはない。前の嵐は、今から20年も前だ。
大雨が原因で洪水が起こり、人々は山へと逃げていた。そんな人々の目前で土砂崩れが起こり、逃げる暇も無く、大勢の人々が巻き込まれて行方不明になった──などと、当時のことを思い出しながら外を眺めていると、人影らしきモノを見付けた。
滴が流れて見にくい窓に、顔が付く位身を乗り出して、目を凝らす。
滝のような雨のせいで影はぼやけ、ハッキリと識別は出来ない。
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