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幾人かの【主人公】達を避けるようにして校内を歩き回る。【主人公】の邪魔にならなければ先程のように通り過ぎるぐらいは出来ないことはなかったが、邪魔にならないようにするに越したことはない。結果多少の遠回りをすることになっても、穏便に済ませる方が――少なくとも悪く転がることはない。それは【群衆】としての役割とも役得ともいっても過言ではない。同時に弊害といっても過言ではなかった。
曲がり角で走ってきた【主人公】にぶつかりながらも結果的には避ける。避けなければならないし、避けることが出来る。面倒事を好むなら害だし、逆ならば得だ。
面倒事が好きかと問われたら即答しかねるものの、嫌いとは答えない。とかく主人公というのは面倒事を起こすか、巻き込まれるかするものである。物語には事件があり、事件があるから物語の主人公に成りうる。【主人公】に、主人公に憧れていた僕は奥底では望んでいた。望んでいたのだろう。叶わぬ望みと知りながらも、心の何処かで期待していた。
もしかしたら【主人公】に、
――せめても【登場人物〔カラーズ〕】に
なれるかもしれないという淡い期待を。
もしかしたら、今も。
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