act-19840907.0*:etc

5/14
前へ
/30ページ
次へ
 確かに可能性は零ではない。それで僕は期待を拭い捨てきれずに残っているかもしれないという――これもまた一つの可能性。  生まれつきの【主人公】が居る一方で、中年過ぎてから【主人公】となった人も居る。しかし、どちらも少数の例外。大抵は中高生の間に決まる。中高生の間でしか【主人公】になれなかったという人も居るが、【主人公】にならなかった人がそれ以降に【主人公】となった話はまず聞かない。  叶わぬ望み、である。期待は捨てた。もしかしたら、の無意識の領域内の話であって、僕は捨てた。諦めた。諦めざるを得なかった。高校生活も折り返す所なのに【登場人物】にすら至ることはない。まだまだ子供だとは思うが、諦め所を見極められない程馬鹿でも、全く受け入れられない程愚昧でもなかった。  【群衆】なら【群衆】らしく生きる。そんな簡単なことが未だに困難に思えて仕方ない。諦めこそしても、望んだ訳ではない生き様は慣れても成れないものだった。早く【主人公】の群れを抜けよう。目を逸らそう。そして部屋に、一人に。そうすれば少なくとも僕は【群衆】ではなくなる。ようやく校舎を抜けて、急いで帰路に着いた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加