act-19840907.0*:etc

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 帰り道は穏やかなもの。学校に比べれば【主人公】は疎らで、電車やバスを使わない通学路では支障をきたすような【事件〔イベント〕】が起きることはまずないと言っていい。  【事件】の中心に【群衆】はいないが、【事件】に巻き込まれないのが【群衆】ではない。【事件】の影響、例えば車両爆破やバスジャクによる運休や遅延のような影響は勿論及ぶし、被害者――中でも死者での内訳は圧倒的に【群衆】が占める。  嫌な話だ。これは【主人公】であったとしても僕は不快に思うだろう。主人公が死ねば物語は終わる。少なくともその主人公の物語は終わる。中にはその後がある【主人公】も居るという噂があるが今は噂と切り捨ても構わない。問題は【主人公】は死んだら困るが【群衆】は死んだら死んだ、となるということ。  公平に「死は訪れる」。【主人公】だろうと人なら死ぬ。生きているなら死ぬ。だが、それは「死が公平に訪れる」という訳ではない。何よりの証拠が結果だ。不公平だ、――【主人公】ならまだしも【群衆】がそう嘆いて変わる世界ではなかったが、僕は嘆く。  そして、残念ながら、今日も何事もなく家に辿り着いてしまった。  嘆かずにいられるか。
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