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「直ちゃん、どこいくの?」
「仕事の話なんて、オレが聞いたところで意味ねぇし。雑用係は外で待機してます」
「雑用だなんて……」
「終わったら呼んでくれ」
ひらひらと手を振って、直久は部屋を後にする。ぱたんと扉が音を立て閉まれば、疎外感が胸で疼いた。
(なんでオレだけが何の力も持ってないんだろう。双子の和久は強い能力を持ってるって言うのに、オレだけなんで……)
それは、直久が十六年の人生の中で、幾度となく繰り返した自問だ。答えは見つからない。一族の長老たちですら、皆目検討がつかないのだ。
ある日突然、能力が開花する者もいるというから、気にすること無いよ、と和久は慰めてくれるが。でも──。
何も感じない。
何も見えない。
自分だけが、役に立たない。必要の無い人間だと言われているような気がする。
生まれてくる必要があったのは和久だけで、自分はいらなかったのではないだろうか。──そんな不毛な考えが脳裏に渦巻く。
(ダメだ。やめよう。んなこと考えたって仕方ないし。生まれてくる必要がなかったとしても、オレ生まれてきちゃったし。仕方ないじゃんか)
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