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ゴールは目の前だというのに、森の薄暗さも手伝って、直久の足取りは重い。
数分後、祠の目の前にたどり着いた直久は、足を止め、あたりを見渡した。そして、目の前に広がる光景に、思わず息を呑む。
「──!?」
まず目に付くのは祠。
直久の目の高さに、さきほど離れた所からも見えた、二本の木を繋ぐ白い縄がある。その縄の一メートルほど奥に、小さな小さな古い祠はひっそりとたたずんでいた。まるで祠がこちらを睨みつけるようだと直久は感じた。
祠全体が古い石でできている。かつては何か装飾が施されていたようだが、原型を想像することもできないほど劣化していた。だが、それでも十分すぎる存在感に、直久は圧倒されていた。
しかし、直久が驚いたのは祠の寂れきった様子でも、威圧的な様子でもない。
(綺麗に雪がないしっ)
その祠を中心にして、半径二メートルほどの円を描くように、綺麗に地面が見えている。くり貫かれたように雪が無いのだ。
「こりゃぁ、雪かき大変だなぁ~」
オーナーはペンションだけじゃなくこの祠のオーナーでもあるのか、と一人で直久が納得していると、山吹オーナーは、違いますよ、と首を横に振った。
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