6 寒椿か……

5/17
前へ
/280ページ
次へ
「注連縄(しめなわ)に紙垂(しで)。……そして、それは封印符か」  ゆずるは縄のすぐ下の地面を指差した。そこには二つにちぎられたのだろう、長方形の白い紙が落ちている。  ゆずるの言葉を受け、無言で和久はその紙を拾い上げると、つなぎ合わせた。切片はぴたりと一致する。  よく見ると、朱字で“封”と書かれているのが、かろうじて読めた。 「この祠は、神を崇めるというよりも……ここに閉じ込めているというわけですね」   オーナーを振り返り、返事をまつ和久。だが、オーナーは困った顔をした。そして、詳しいことは知らないのだと言う。  本当に何も聞かされていないのだろう。直久の目には、彼が嘘をついているようには見えなかった。 「では、この祠について、知っていることを全て教えていただけますか?」  和久の言葉には、柔らかく微笑みをたたえていても、有無を言わさぬところがある。 「わかりました」  僅かに戸惑ったようにも見えたオーナーだったが、ついには深くうなずき、和久を見つめ返した。その表情には、覚悟がにじんでいる。
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6347人が本棚に入れています
本棚に追加