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「かつて、生け贄は、ここまで村人に付き添われてやってきました。そして、ここの祠のすぐ向こうの崖から、神にその身を捧げます」
「……捧げるって」
直久は恐る恐る聞いた。先ほど弟から鬼に身を“捧げる”ご先祖様の話を聞いたばかり。少々過敏になっても仕方の無いことだった。
「つまり、崖から飛び降りるのです」
「そ、そのあと食べられたりとかしないですよねっ!!」
「は?」
オーナーは訝しげな顔で、直久を見た。
「あ、いや、なんでもないデス……」
直久が引き下がったので、オーナーはとくに気に留めずに、改めて祠を見やった。
そして、手を合わせ、持ってきたオニギリを一つを供え、かわりに、昨日お供えしたのだろう、硬くなってしまった古いおにぎりをしまい込む。
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