6347人が本棚に入れています
本棚に追加
直久はそんなオーナーにつられて、そっと手を合わせる。だが、和久とゆずるは違った。ゆずるは刺すような視線で祠を睨み、和久はしきりに周囲を気にするように視線を泳がしている。
「さあ、戻りましょう」
気が済んだのか、すっきりとした顔のオーナーが三人を振り返った。
直久は、異議なしと、コクコクと首を縦に振った。
寒いし、薄暗いし、不気味だ。それに山の天気は変わりやすいと聞く。とっとと帰ろう。今すぐ帰ろう。帰って、あったかいコタツに入り、みかんが食べたい。
(ペンションにコタツがないのが残念すぎるっ!! なんで洋風なんだっ。冬はコタツとみかんだろうっ)
勝手に鼻息を荒くしていると、隣にいた和久がぽつりとつぶやいた。
「椿……」
今度は何だ。
そう思ったのは直久だけではなく、オーナーもだったらしい。オーナーはぎくりと体を硬直させた。
最初のコメントを投稿しよう!