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◆◇
「椿は、不吉な花だとされているんだ。彼岸花(ひがんばな)に匹敵するくらいね」
帰り道、やはり和久は小声になった。
兄が、椿がどうした、としつこく聞くのでオーナーに心配させないよう十分に配慮しながら、話をしなくてはならない。
「ふ、不吉?」
思わず聞き返した兄に、和久はこくりとうなずく。
「彼岸花は知っているよね? 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とも言うけど」
「昔、墓地とかによく咲いてるヤツだろ?」
期待通りの答えに、和久はにんまりと顔を緩ませ、首を縦に動かした。
彼岸花。その名の通り、お彼岸の時期に咲く花だ。別の説には、毒を持つこの美しい花を食べた後は“彼岸(死)”しかない、ということからその名がついた、とされる。
「死人花(しびとばな)、地獄花、幽霊花、なんていろんな別名を持ってるくらい、不吉だといわれている花なんだ」
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