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「毒があったのか……綺麗な華には毒がある……綺麗な女は猛毒を吐く……」
急に、思いつめたような顔で兄がぶつぶつと言い出した。
「……どうしたの? 何の話?」
「我が家の姉君の話。暴君とも言う……」
「…………」
ほぼ同時に双子の頭を、『己の道に立ちふさがるもの全てをなぎ倒して突き進む、天下無敵の女性』が高笑いしている様子がよぎり、畏ろしさ無言になる。いや、怖ろしさか。はたまた、身の危険とも言うだろう。
「そ、そんなことより、椿は?」
「そ、そうだね、えっと椿は……」
椿は一見、可愛らしい印象すら受ける赤や白の花である。
不吉なこと──死とは結びつかないように思われがちだ。
「人が死ぬ瞬間を表現するのに使われやすい植物、それが椿の花なんだ。椿の花って、咲ききると花の部分がそのままの形で落ちるでしょ。ポトリって。その様子がまるで、首が落ちるみたいだって言うんだよ」
「誰がそんな不吉なことをーっ!」
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