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「知らないよ。昔からそう言うの。――で、その椿の花が落ちるシーンがあったら、首を刎ねられて死んだんだなぁ、と想像させる演出に使われているわけ」
「ひぃぃぃぃぃぃ」
息を吸い込むようにして、声を出さないように悲鳴を上げる兄は、本当に器用だと思う。そして、ほほえましい。ここまで素直な気持ちを表に出せるのが和久にはうらやましくもある。
「それより」
後ろからゆずるが声をかけてきた。
条件反射のようにゆずるを睨見返す直久の姿に少々目を丸めながら、和久もゆずるを振り返った。
「あの祠……」
ゆずるがちらりとオーナーに視線を送った。その瞳に、かすかに思いやりの心が見え隠れしているようにもみえる。
「うん。ゆずるも何か感じたの?」
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