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「山の神といってたね、オーナーは」
そこでやっと兄は言葉を飲み込んだようで、目を丸々と見開いた。
「ど、どこいっちゃったんだよっ! だって、オーナー一生懸命毎日拝んでるんだろう? 留守なのに拝んでるわけ!?」
「うん……」
だから、とてもオーナーには言えなかった。
あなたが毎日娘のために祈っている神は、そこにはいない、とは。
「絶対に秘密にしておいた方がいいよな」
直久は、小声で確認する。
「そうだね。たぶん、オーナーの最後の頼みの綱──心の支えになっていると思うんだ」
和久は、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、先頭を行くオーナーの背中を見つめた。
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