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だが、弟は分かってくれていない。ふう、とため息をついて、兄をたしなめるような言い方をした。
「何、遊んでるの? こんな時に」
「遊んでない、遊んでない。マジ動けないって」
「ホントに動けないの?」
「うんうん。蜘蛛の巣に引っかかった蝶々って感じ。もしくは、ゴキブリほいほいに捕まったゴキブリ」
「……たぶん、直ちゃんなら後者だね。ちょっと待ってて」
和久はきりりと顔を引き締め、両手を胸の前で合わせると、数秒、目を閉じた。そして、ぱちりと目を開けたかと思うと、直久の回りを見渡す。
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