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───ギィィィィィィ……
金属をこすり合わせたような音が、三階全体の空気を切り裂いた。
ほぼ同時に、和久が弾かれたように振り返って、身構えた。直久も目を見張る。
(あれ……? 扉が開いてる……?)
よく見れば、問題の部屋の扉が、わずかに開いているではないか。
廊下には自分たちしかいない。その自分たちでなければ、この扉を開けたのは……誰だ!?
(中に誰かいるのか!?)
食い入るように直久はその扉を見た。
明らかに霊気は、その開かれた扉の僅かな隙間から、次々とあふれ出し、廊下を満たしてく。まるで灰色のガスに気化していくドライアイスを見ているようだ。自分の膝下は、霊気で完全に視野から消えた。
「誰か来る……足音が近づいてくる」
かすれた声で、和久が言った。
「足音?」
直久は耳を研ぎ澄ました。
だが、何も聞こえない。
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