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ただ、徐々に自分を取り巻く空気が、冷えていくのを肌で感じる。口から出る息も白い。まるで、三階全体が大きな冷凍庫になってしまったように。
直久が、緊張からか、口の渇きを感じはじめた時、再びあの金属音が廊下を駆け抜けていった。
ギィィィィィィィィィィィーーーー。
「!」
バンッと激しい音をたて、完全に開け放たれた扉。同時に、体が吹き飛ぶのではないかと思われる衝撃波が、二人を襲う。首から下が硬直している直久は、難なくその冷たい霊気の衝撃波をやりすごしたが、和久はすさまじい風圧に、足を二、三歩後退させられてしまう。
先ほどまでとは、桁外れの霊気だった。
今の直久なら、それが分かる。そのすごさが。
鳥肌が立った。だが、不思議と恐怖はない。
こんなにも、脅威的な霊気を放つ相手を前にしているというのに、胸が高鳴っている。
自分の中で、確実に何かが目覚めようとしている気がした。
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