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「何やつじゃ」
それは、若い青年のような、澄んだ声だった。と同時に、聞き覚えのある少女の声も響く。
双子は息を呑んで開け放たれた扉の先にいる人影を見据えた。
ふわふわとした綿菓子のような少女──八重だ。部屋の入口で、肩幅に足を開き、胸を反るようにして佇んでいる。
その彼女らしからぬ佇まいに目を瞬かせれば、彼女の輪郭線が薄くぼやけ、別の人型が重なる。
それは、初めて目にする青年だった。長くサラサラと揺れる亜麻色の髪を持ち、背が異様に高い。そして、切れ長のグレーの瞳。
その瞳が未だ動けずにいる直久たちを見下ろして、ふっと笑った……。
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