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「お姉ちゃんが……」
「えっと……よしのちゃん?」
八重はコクンと頷く。
「お姉ちゃんが、このところずっと変なの」
「変?」
直久は、応接間で会ったよしののことを思い返してみた。自分と年は変わらないように見えたが、実にしっかりとしていて、大人びた印象だった。どこも、おかしいところなど思い当たらない。
どういう意味だろう、と、八重の返事を目で促す。
「初めて、変だと思ったのは、お姉ちゃんの十六歳の誕生日だったの。三人で夕ご飯を食べていて、台所に飲み物を取りに行ったお姉ちゃんが、戻ってこないから様子を見に行ったのね。そしたら──」
恐ろしいものでも見たような表情で、八重ちゃんは言葉を切った。その時のことを思い出して、声を詰まらせたのかもしれない。
「そしたら?」
大丈夫だよ、と直久は八重の肩に手を置いた。
「そしたら、お姉ちゃんは……固まって動かなくなっていたの」
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