7 俺にかまうな

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「ていうかさ、神様なんだろうあんた。こんなとこで何してんだよ?」 「な、直ちゃんっ!!」  しかし、自分を畏れずにまっすぐぶつかってくる直久が珍しいのか、山神は笑顔をを崩さずに返事をする。 「この娘が我を解き放った。その礼に、この家で悪さをしている輩(ヤカラ)を始末してやろうと思ったのじゃ」 「八重ちゃんがあなたを解き放った? そっか、八重ちゃんだったんだ。祠の封印を破ったのは……」 「不本意にも長いこと閉じ込められていた我は大いに助かった。なあに、余興の一つと思うて、娘の願いを叶えてやろうとしたまでよ。しかし、そのためには依代が必要じゃった。満足のいく依代ではないが、この娘の体を使わせて貰うておる」  そう言って、ふふ、っと山神は笑った。  なるほど、と和久は思った。きっと姉のよしのを心配した八重が、祠に祈りを捧げに行き、何かの拍子に祠の封印を解いてしまったのだろう。久しぶりに自由の身となった山神は、礼として八重の願いを聞いてやろうとしているのだ。つまり、このペンションに住み着く悪霊と化した、生け贄の少女たちを始末してやろう、と。  「ということは……結界で捕らえようとしていたのは、生け贄になった少女の霊ですか」  和久は、確認するように山神を見つめた。
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