7 俺にかまうな

24/46
前へ
/280ページ
次へ
  「おそらく、その妖気が我の結界に掛かったのだろうて」  和久は愕然とした。  すぐに、全てを飲み込むことはできない。でも真実に違いない。  神が嘘をつくことはない。真実を全て言わないことはあっても。 「なあ、何の話かさっぱりわかんないんだけど」  実に申し訳なさそうに、説明を求める兄を完全無視して、和久は腕を組んで考え込みだした。 (妖気……直ちゃんから……)  何か邪悪なものが、兄の体内の奥底に潜んでいるのだ。  それに、一つ引っかかることがある。さっきから、封印が施されている、という山神の言葉が、和久の心をざわめき立たせていた。  凶悪なモノを封印できるほどの、力の持ち主を、和久は多くは知らない。 (……本家は、まさか、このことを知って……いる?)  その時、和久の視界がゆらりと揺れた。否、目の前の空間が歪んだのだ。はっと我に返る和久。 『主殿(ぬしどの)』   
/280ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6347人が本棚に入れています
本棚に追加